納車翌日、はじめて自分の車をじっくり見る
納車の翌日。日曜の朝のことです。
日曜の朝は、たいていカフェにいます。この日は、代官山のIVY Placeへ。前日に納車したばかり(Ferrari F355を納車した日|Blu Le Mansを、自分のガレージへ)の車を、こうしてじっくり眺めるのは初めてでした。

ここに来るのは大抵日曜日で、路上に車を停めることが多いのですが、この日は店の駐車場に入れました。買ったばかりのフェラーリを街なかに置いて、何食わぬ顔で立ち去る―この308のオーナーのように―僕には、まだそれができません。しかし、この308は良い色ですね。

中古車を買うときは、いつもならボディのチリ、フロントフードの取り付け部、車体の下まわりまで入念に確かめます。けれど購入記(Ferrari F355 Blu Le Mans|「蒼が好きな方に」)に書いたとおり、普通の人にこの手の車――とりわけ初めての一台は、確認が購入後になると思います。
F355という車のこと――PA、PR、そして私のPR
外観に入る前に、F355のおさらいを。F355には年式によってPA・PR・XRという区分があります。
- PA(前期型/1994年5月〜12月):エンジン制御にボッシュのモトロニックM2.7を採用。片バンクごとに独立したECUで制御する方式で、ダイレクトで官能的な吹け上がりが持ち味とされます。
- PR(中期型/1995年1月〜1996年3月):エアバッグなどの安全装備が加わった過渡期のモデル。制御は引き続きM2.7です。
- XR(後期型/1996年4月〜1998年12月):最も流通量の多い後期型。制御が統合型のM5.2に変わり、信頼性と扱いやすさが向上しました。可変ダンパーの制御なども進化しています。
詳細な情報は、F355の年式別の違いを整理した解説を参考にしてください。素人さんとのことですが、よくまとまっています。私のF355は、このうちのPRです。
外観をたどる
フロント――飛び石の傷と、プロテクションフィルムの逡巡
まずは外観から、フロントです。飛び石による傷は、やはりいくつかあります。残念ですが、こればかりは仕方ありません。昔はプロテクションフィルムなどというものはありませんでした。これ以上増えるのを防ぐために貼るのもありですが、30年選手のペイントが剥がすときに耐えられるかどうか。じっくり考えようと思います。

ポップアップヘッドライト
ヘッドライトは、使うときだけ起き上がる格納式(リトラクタブル)です。開けた表情は、私の年代にはやはり格好よく映ります。

フロントフードを開ける――本革の鞄と、キルスイッチ
前に向かって開くフロントフードを開けると、工具などをおさめた本革製の鞄が鎮座しています。フード下はかなり深さがあり、大人の2泊旅行分の荷物なら余裕で入りそうです。右タイアの上には、バッテリーのキルスイッチが備わっています。左側には、ヒューズボックスなどがあります。



フードを閉めるときは、ある程度の高さから自重で落とすようにするとよいそうです。少し気が引けますが、強くは落ちないのでご安心を。閉めたあとは、必ず正常に固定されたかどうかを確認します。

エンジンベイ――5バルブと、赤い結晶塗装
エンジンベイです。小ぶりに見えるエアクリーナーのボックスが2つあるのがいい。先ほどの型式の話とつながりますが、この2つこそ、M2.7を積む前期・中期型の証です。

カムカバーは赤い結晶塗装で、cinquevalvole=5バルブと記されています。5バルブの市販エンジンは、このF355のほかにもヤマハやトヨタ、三菱などが手がけていました。けれど今ではすっかり姿を消しています。一瞬だけ咲いた花だったのかもしれません。

エンジンルームを上から覗き込むと、なんと路面が見えます。良い比較ではないのですが、オートザムAZ-1以来です。昔バンコクでバスに乗ったとき、床から路面が見えていたのを思い出します。

このF355には、マフラーにキダスペシャルが組まれています。社外マフラーはほかにもイトレー、クライスジーク、パワークラフト、TUBIなど名の知れたところがありますが、まずはこのまま様子を見るつもりです。

エンジンオイルのフィラーキャップには、フェラーリのロゴが入っています。塗装が剥げているのが少し気になります。ドライサンプのため、エンジンオイルは8L入ります。

エンジンフードのルーバー
エンジンフードには、たくさんのルーバーが空いています。ほとんど空いているといっても過言ではないでしょう。洗車のときに気を使いそうです。

リア――丸目のテールランプと、ピニンファリーナ
リアにまわると、丸い2灯(左右で4灯でしょうか)のテールランプ。私には、この丸目がいい。サイドにはピニンファリーナのロゴも見えます。


給油口――ゴムのベロと、熱との付き合い方
給油口には、ガソリンが塗装に垂れないようにだと思いますが、ゴムのベロがついています。走るとエンジンの熱でガソリンが熱せられ、気化したガソリンの圧力でキャップが押され、開かなくなることがあるそうです。少しゆるめに閉めておくとよいでしょう。また、エンジンが熱いうちに給油しようとすると、気化したガソリンのせいで給油機が止まってしまいます。冷めてから入れるのがよさそうです。

ホイールと、サイドウィンカー
マグネシウム製のホイールは傷もなく、きれいな状態を保っています。なので、傷をつけないよう、気をつけて乗る必要があります。ホイールを傷から守る方法を検討する必要がありそうです。普通の車と違って、前後でトレッド幅が大きく違うため、車両の感覚に慣れるまでは気を遣います。

サイドウィンカーは、この頃のフェラーリ共通の部品だと思います。F40などにもついていたかと思います。昔乗っていたイタリアの小さな車に、私はこれをカスタムでつけていました。


エアインテーク――348との違いと、ドアの彫りの深さ
348と違い、355のエアインテークにはフィンがありません。ここはラジエーターに空気を送っています。ドアを開けると、かなり彫りが深いことがわかります。通常の車のドアの外側に、もう一枚ボディがあるような造形で、そのまま後方へ繋がっています。


運転席に乗り込む
隠れたドアノブと、変わらないキーの位置
ドアを開けたついでに、内装へ。実はドアノブは、エアスクープの内側に隠れています。かなり低い位置です。348からキーの位置は変えられなかったのか、通常の場所にあります。ドアノブと同じ高さにあったら、さすがに使いにくいでしょうが。


シフトゲートと、リバースの入れ方
特徴的なシフトゲート。斜め方向のシフトチェンジを早く済ますのは、慣れが必要です。左上のリバースに入れるには、ノブをシャフトごと下に押し込みます。

排気バルブと、給油リッド
シフトに続く、センターコンソール右下のボタンには、排気バルブのコントロールが割り当てられています。給油口のリッドは電磁式だと思います。電源がオンでないと開かないのでしょう。ガソリンスタンドでエンジンを切る前に、ボタンを押しておく必要があります。


エアコンと、電子制御の少ない室内
納車の日にも触れた、懸案のエアコンのコントロールボタンとダイアル。イタリア車によく見られる内装のベタつきは、まだほとんど発生していないようです。現代の車と違って電子制御がほとんど積まれていないため、ボタン類はかなり少なく、シンプルです。当然、カップホルダーなどもありません。

ステアリング――納車時に換装
ステアリングホイール。実は純正のエアバッグ付きは、デザインが好きになれなかったことと、径が私には細すぎたことから、納車時に交換していただきました。もちろん純正は保管してあります。

サイドブレーキと、フードレバー
サイドブレーキは降りる側にあるため、通常は下に倒れています。引き上げてロック、引き上げてボタンを押すと解除です。フロントフードとエンジンベイのハッチを開けるレバーもあります。フロントはロックが外れるだけですが、リアはバーンと跳ね上がります。少しダンピングが効いていてもいい気がします。

サイドシル――歴代オーナーの傷も、歴史のうち
少し広めのサイドシル。ここのプラスチックボードに傷をつけないようにするのは、なかなか難しいのでしょう。歴代のオーナーがつけたであろう傷が残っています。それも歴史です。

ドアレバーと、計器盤
ドアのレバーは、引き上げるとドアが開く仕組みです。その手前には、サイドウィンドウのコントロールがあります。各種インジケーターは、左から時計、ガソリン、油温。バッテリーを切って駐車しているので、時計は正確ではありません。その下には、年代もののナビがついています。地図データは2017年のもの。モニターがせり出してくる懐かしいタイプで、いつも閉じてしまいます。


簡素なレバー類
ウィンカーなどのレバー類は、不釣り合いなほど簡素です。

シートと、跳ね馬のエンボス
シートはスレもなく、年式を考えれば良い状態です。ヘッドレストには、跳ね馬のマークがエンボス加工で刻まれています。

ダッシュのF355バッジ、ルーフライナー
ダッシュパネルの右端には、F355の文字があります。ルーフライナーは剥がれも垂れ下がりもなく、30年もののイタリア車としては上出来です。後方には室内灯があります。この室内灯には後日に起こったエピソードがあります。


全体の印象――派手ではなく、静かな佇まい
全体としては、派手・豪華というよりは、シンプルで落ち着いた佇まいです。これは内装色が黒であることも大きいのかもしれません。タンなどにすると、シンプルでもおしゃれな雰囲気が漂います。

こうして、外も中も一通り確かめました。特別な感慨があったわけではありません。ただ、ようやく自分のものになったF355が、どんな状態なのかを知っておきたかった。乗っていくのは、ここからです。

