Ferrari F355 Blu Le Mans|「蒼が好きな方に」

フェラーリ F355

Ferrari F355348の後継モデルとして、1994年から1999年までの5年間だけ生産された、ピニンファリーナデザインのV8ベルリネッタ。「F355」という名前は、3.5リッターのエンジンに、シリンダーあたり5バルブという当時としては挑戦的なメカニズムを冠したことに由来します。

いつか所有してみたい車でした。

人生も半分以上を過ぎ、いつ終わりを迎えるか分からないと思い始めた頃から、できることはできるだけ今やろうという気持ちが強くなってきました。まわりから見れば無茶に映るかもしれません。それでも、「いつか」は永遠に来ないことを、この年齢になるとよく知っています。

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三度目のスタート

最初の挑戦は、仕事の忙しさに飲まれて立ち消えになりました。フェラーリを買おうと決意し、いくつかのショップを訪ねたものの、話を前に進めることができなかった。

これではいけないと思い直し、もう一度F355選びを再開することにしました。幸運にも友人が、彼の地元の知人とディーラーを紹介してくれたのですが、こちらも成約には至りませんでした。

Ferrari F355の内装例

理由はふたつありました。

ひとつは、関東圏でメンテナンスを任せられるショップのコネクションを持っていなかったこと。紹介していただく予定だったメンテナンスに定評のあるショップへ下見に行くと、「うちで買っていただいた方が優先になりますよね、それより安い車を出せますよ」と営業されました。信頼感が持てず、このお話は辞することになりました。「人」が大事だと痛感した瞬間でした。

もうひとつは、現車を見ずに買うことへの抵抗感です。これまで車を選ぶときは、パネルのチリの具合、下回り、エンジンルームをすべて自分の目で確かめてから購入してきました。今思えば、その時点の自分にはまだ買えなかったのでしょう。ディーラーさんとご友人には大変ご迷惑をおかけしましたが、車はすぐに次の方へ渡ったようで、少しほっとしています。

コーナーストーンズへの再訪

向かったのは、コーナーストーンズさんでした。

以前、初めて訪問したとき、Tシャツ・デニム・スニーカーという、どう見ても対象顧客とは言えない出で立ちの私にも、丁寧に対応していただいた記憶がありました。メールで1年前に伺ったことをお伝えし、訪問日を確定しました。

古くからの先輩と一緒に足を運び、328、348、360、F430と、それぞれ丁寧に案内していただきました。フェラーリのV8ミッドシップ・ベルリネッタの系譜が、ひと部屋に並んでいる景色でした。並行して他のF355について調べてはいましたが、これだと思えるものにはなかなか出会えずにいました。

「蒼が好きな方に買っていただきたいです」

一通り案内が終わった頃、店長さんからこんな言葉をいただきました。

蒼いF355が入ってきます。蒼が好きという方に買っていただきたいです。

それまで、会話の中で一度も色の話をした覚えはありませんでした。それでも、その一言はまっすぐに届きました。

随分昔に葉山あたりで見かけた、蒼のF355にタン内装という組み合わせが、ずっと頭の中に残っていたからです。赤のフェラーリではなく、本当に欲しかったのは蒼いフェラーリだった。その瞬間、はっきりと確信しました。

1ヶ月半後、Blu Le Mansと対面する

1ヶ月半後、蒼のF355がついに入庫しました。

訪問中、気持ちはずっとハイになっていました。それでも、できるだけ冷静に振る舞うよう努めました。一緒に行った友人は後日、「買わないと思っていた」と言っていました。年齢とともに、感情を表に出さないことが少しうまくなったようです。

エンジン音を聞いてしまったら、もう迷う余地はありませんでした。

Blu Le Mans——コード516。フェラーリには赤のイメージが強いものの、蒼の系譜も長く、Blu Tour de France、Blu Pozziといったレース史にちなんだ名前が並びます。その中でもBlu Le Mansは、深く落ち着いた蒼。光の角度で表情を変える、奥行きのある色でした。

後日、メールにてお世話になる旨をお伝えし、大きな一歩を踏み出しました。

買うということ、振り返って思うこと

F355の流通数はそれほど多くなく、市場に出る物件は限られています。Goonetに掲載されているMTのF355は、2026年4月末時点で14台。早い者勝ちの側面があることを、最初から理解しておく必要がありました。つまり、実物を自分で見ずに買う可能性も、最初から視野に入れておくべきだったのです。

その場合に重要になるのは、現車をチェックしてくれるディーラーさんやブローカーさんとの信頼関係です。自分の目の代わりになってくれる人がいれば、遠方の物件でも判断できます。

また、初めての一台に対面したとき、舞い上がっているのは当然のことです。普段なら必ずチェックする箇所も、興奮の中では見落とすことがあります。だとすれば、現車確認にこだわりすぎることにも、あまり意味がないのかもしれません。

「ここにお願いしよう」と思えるところで買う。それが結局、最も正しい判断軸だったのだと思います。整備場所を気にしてフェラーリが買えないより、まず買って、それから考える。自分はその順番ではなかったけれど、それでも良いのかもしれないと、今は思っています。

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